高齢者向けの「プラチナNISA」ってどうなの?現役の投資家がフライング検証

最近、NISA界隈が騒がしくなってきました。「トランプショックで大損した」という話ももちろんですが、それと併せて急に出てきたのが「プラチナNISA」の話題です。何でも高齢者向けのNISAだそうですが、なぜいきなりこんな話が飛び出してきたのでしょうか。その経緯や、まだ始まってもいないプラチナNISAの制度設計を勝手に想像した上で、現役の投資家である管理人タナカが検証してみたいと思います。

目次

いきなり飛び出したプラチナNISA案

2025年4月に、プラチナNISAのニュースが飛び交いました。それまで検討はしていたそうですが、結構唐突感もあったので私もビックリしました。そんなこと検討してたの?と思いましたが、実はやっていたようです。
かねてからニーズがあったそうで、それに応える形でプラチナNISAはどうやら実現しそうです。

プラチナNISAってどんなNISA?

現段階で聞こえてくる情報として、プラチナNISAとは65歳以上の人に限定した新しいNISA制度のようです。「高齢者向けのNISA」が欲しいというニーズが、高齢者や証券業界から上がっていたそうで、それに応えた制度なんだとか。
現行のNISAは長期的な視野で積立投資をするのに適した制度なので、それだとすでに高齢者、または高齢者になりかけている世代の人はどうすんの?という声がありました。当研究所も50代の私が最速でFIREを目指すために運営しているので、私も「NISAでは間に合わない」民の1人です。さらに65歳を超えてくると資産形成の時間はもっとないので、「NISAでは間に合わない」民としてはより深刻です。そんな人たちのためにプラチナNISAが登場すると考えて良さそうです。

言い出しっぺはNISA生みの親、岸田元首相

ところで、このプラチナNISAの提言をしているのは、新NISAの生みの親でもあるキッシーこと岸田元首相です。この話題で久しぶりに顔を見た気がしますが、やはり同氏はNISAなど資産形成に関する制度についての関心が高いのでしょうか。
もっとも、NISAの拡充やプラチナNISAの創設は、いずれも「老後資金は自分で何とかしてね」という国からのメッセージなので、その方向性の政治家ということなんでしょうけど。

現段階で分かっているプラチナNISAの概要

この記事を書いている2025年4月22日時点でプラチナNISAについて分かっている(決まっていること?)は、以下のとおりです。

  • NISAと同様に投資で得られた利益が非課税になる
  • 65歳以上の人が対象
  • 毎月分配型の投資信託が対象に含まれる

2つ目までは、まぁ何となく予想もできたことです。面白いのは、3つ目です。現行制度のNISAでは毎月分配型の投資信託は基本的に対象になってはおらず、再投資型の投資信託が主体です。再投資型の投資信託は運用益を自動的に再投資するので複利効果が発揮されやすく、長期投資をしていると資産が加速度的に増えていくメリットがあります。NISAは現役世代向けに複利をいかした長期投資を促すための制度ですが、プラチナNISAは違います。
もう年金の受給が始まるような世代に向けて、プラチナNISAの運用益を老後資金の足しにしてほしいとの思惑があります。なので、長期目線で複利で増やそう!ではなく、「目の前のゼニ」が得られる投資を想定しているわけです。

実は結構成功している新NISA

プラチナNISAの話が出てきた背景には、新NISAの成功があります。すでにNISA口座の開設数は2,500万を超えているそうで、18歳以上の人のうち4人に1人がNISA口座を持っている計算になります。
当時の岸田首相が「貯蓄から投資へ」とのスローガンを掲げてNISAを大幅拡充、新NISAの爆誕となったわけですが、制度的には成功していると言っていいでしょう。ただし、トランプショックで株の暴落があったので、「オルカン」やS&P500連動型の投資信託など人気を集めている銘柄で運用している人たちは顔面蒼白かもしれませんが。
ちなみに、私もNISA口座でREITやインデックス(株価指数)の積立投資をやっています。いずれもメインラインではないですが、インデックスの積立は時間が経つごとに威力を発揮してくれそうなので、最終的には老後資金として活躍してくれる・・・はずです。
このように新NISAが成功しているということは国民のニーズも高い、それなら高齢者にもフィットするNISAを作ろうということで、プラチナNISAが考案されたそうです。
国としても色んな思惑はあると思いますが、NISAはどんな形であれ減税制度であり、利用している人にはメリットがあるので、プラチナNISAも歓迎するべきでしょう。

現時点で想像できるプラチナNISAのメリット

まだ制度が始まってもいないプラチナNISAですが、現段階で漏れ聞こえてくる情報からメリットを勝手に想像してみました。

メリット① 高齢になってからでも老後資金の上乗せができる

NISAは現役世代、とりわけ若い人向けの制度と思われている部分があります。実際にそう思えてくるような制度設計になっているので、高齢者の多くは「自分には関係ない」と思ってきた部分があります。
プラチナNISAはこうした人たちに光を当てるような制度なので、これまで「関係ない」と思っていた人たちも使いやすくなるでしょう。
もちろん現行のNISAを高齢者が利用してもいいんですが、毎月分配型の投資信託が含まれていないことから「今すぐ投資の利益が欲しい」というニーズは満たせませんでした。プラチナNISAで毎月分配型の投資信託を購入すればすぐに分配金を受け取ることができるので、「将来ではなく目の前のゼニ」が老後資金の足しになります。

メリット② 2割ほどの税金分も自分の手残りになる

投資の利益には、20.315%の税金がかかります。株や投資信託、FXなどはすべて一律です。NISAはこれが無税になる制度なので、もちろんプラチナNISAも同様です。この2割というのは案外曲者で、仮に毎月10万円の運用益があったとしても税引き後は8万円弱になってしまいます。「毎月2万円変わってくる」となると、バカにできませんよね。

メリット③ 投資の成果を実感しやすい

毎月分配型の投資信託は、その名のとおり毎月決まった日に分配金が支払われます。サラリーマンとして勤めてきた人にとっては給料日のような感覚でお金が入るので、投資の成果を実感しやすいと思います。
もっとも、毎月お金が入るといって手放しで喜ぶわけにはいかない部分もあるんですが、それについては後述します。

現時点で早くも心配しているプラチナNISAのデメリット、注意点

メリットの次には、私が現時点で早くも心配しているプラチナNISAのデメリットや注意点についてもまとめてみました。プラチナNISAで初めて投資をしてみようという方は、これらの点をしっかり留意しておいてほしいと思います。

デメリット① あくまでもお金を持っている人が対象

プラチナNISAで想定している投資信託の利回りは、おおむね3%から5%程度といわれています。投資信託によっては3%を下回ることもあるでしょう。
これを計算してみましょう。例えば100万円を年利3%で運用している場合、プラチナNISAであれば非課税なので年間で3万円の利益です。これを12で割ると、毎月の分配金は2,500円。

「ん?案外少なくない?」

と思った方は多いと思います。そうなんです、プラチナNISAといえどもまとまった資金がないと分配金も大したことないんです。せめて毎月3万円は欲しいとなると、種銭は1,200万円必要です。毎月10万円欲しいとなると4,000万円!!
これだけの余剰資金がある人は、すでにプラチナNISAに頼らなくても老後資金の手当てをしている可能性が高く、「結局はお金がある人だけの制度」と言われても仕方ない部分がありますね。
退職金でまとまったお金が入って使い道がなく、それをプラチナNISAで運用するとかであればアリかもしれません。

デメリット② 毎月分配型の投資信託には落とし穴も多い

「毎月分配型の投資信託」と先ほどから軽く言及していますが、これもなかなかの曲者です。というのも、毎月分配型の投資信託にはあまり良いものが少なく、だからこそNISAでは対象となっていない現実があります。
投資信託は運用がうまくいっていれば分配金を出すことはできるわけですが、毎月必ずしもうまくいくとは限りません。しかも毎月必ず利益を分配できるような運用方法ってそれほど多くはないので、毎月分配金を出すのって簡単なことじゃないんです。それでも毎月分配型とうたっている以上、分配金を出さなければならず、運用原資から分配金を出すことがあります。こういう分配金のことを、「タコ足配当」といいます。タコは飢えると自分の足を食べることがあるそうで、それにちなんだ言葉です。
こちらは、ある毎月分配型投資信託の目論見書にある分配金についてのくだりです。

シレっとなかなか怖いことが書いてあります。毎月分配型の投資信託の目論見書を見ると、だいたいこの記載があります。つまり、利益が出ない時は運用原資から分配金を出すので、その分基準価額(投資信託の価格)は下がりますよ、というわけです。
こうしたタコ足配当だと自分のお金を払い戻されているだけで、全然お金は増えていません。しかも手数料を支払って自分のお金が戻ってきているだけなので、むしろ損をしています。
これが毎月分配型投資信託の闇といえる部分で、プラチナNISAで対象になっているからといってタコ足配当が続いている投資信託を選ぶべきではありません。

デメリット③ 非課税になるだけで利益が保証されているわけではない

3つ目、これもめっちゃ重要です。NISAでも同じような誤解がよく見られましたが、プラチナNISAも同様に税金の優遇制度というだけで、「プラチナNISA」という投資商品があるわけではありません。プラチナNISA口座で投資をすれば、利益が非課税になるだけであり、利益が保証されているわけではありません。
先ほどのタコ足配当も含めて保有している投資商品の価格が下がれば含み損が発生しますし、運用不振によって分配金が出なくなってしまうこともあります。
プラチナNISAであろうと何であろうと、投資は元本保証ではなく、利益が保証されているわけでもありません。プラチナNISAで運用成績が良好な投資信託を保有し、その投資信託で分配金が出ている場合に限り、毎月の安定的な収入となります。

実際のところ、プラチナNISAはアリなのか?

ここまでの解説をお読みになって、「結局、プラチナNISAはアリなのか?」と疑問を感じた方は多いと思います。現段階で得られている情報で、プラチナNISAがアリなのかどうかについて検証してみましょう。

少なくとも数百万円以上の資金があればアリ

毎月数万円程度の収入が欲しいということであれば、やはり種銭が数百万円以上は必要です。それだけの余剰資金がある人であれば、プラチナNISAはアリだと思います。もちろんプラチナNISAだけに依存するのはリスキーなので、あくまでも分散投資のひとつとして位置づけるのが適切です。

購入する商品を自分で選べるのであればアリ

プラチナNISAではおそらく、たくさんの投資信託が対象になると思います。その中から買うべきものを自分で選べる人は、プラチナNISAで利益を出せる人です。
もちろん、現段階で何も知らなくても問題ありません。ネットなどで情報収集をして、どんな投資信託を買うのがいいのかを比較検討して、購入する。この一連の作業を自分でできる人はアリです。
何でも人任せにする人は間違った情報を鵜呑みにしてしまったり、最悪の場合は投資詐欺に遭ってしまう恐れすらあります。プラチナNISAに限らず投資は自分で判断するのが基本なので、何でも人任せにしてしまう人はプラチナNISAもやらないほうが無難です。

プラチナNISAにまつわる陰謀説について

個人的にはメリットのほうが大きいと思うプラチナNISAですが、こういう制度が登場すると必ずのように出てくるのが、「陰謀説」です。プラチナNISAについても早くも陰謀説がチラホラと出てきているので、それについても触れておきたいと思います。

結局は高齢者のタンス預金が狙われてるだけ

高齢者を対象としている制度であり、「NISAのメリットを高齢者に最適化」というのが制度の主旨ではあるのですが、それに対して「結局は高齢者のタンス預金が狙われているだけ」との批判があります。
確かにそうかもしれません。高齢者は保守的な人が多いのでなかなか投資にお金を出さない傾向があるでしょう。その財布のひもを緩ませようとするためにプラチナNISA、というのはあり得る構図です。
でも、それでいいじゃないですか。投資に絶対はないのでもちろん損をする人も出てくると思いますが、逆に老後資金を安定させられる人もいるでしょうから。非課税でお金を増やせる制度を作りましたよ、ということであれば使いたい人は使えばいいだけの話です。

国が推奨するものには裏があるに決まっている

新NISAが登場した時に、某元グラビアアイドルが「国が推奨するものには裏がある」と発信して話題になったことがありました。プラチナNISAも国が作って推奨する制度である以上、何か裏があるというわけです。これって、どうなのでしょう?
もちろん、国にも思惑があります。「貯蓄から投資へ」というスローガンが物語っているように、国は国民にもっと投資をしてほしいと考えています。それによってお金の心配を解消できる人が増えればいいことですし、そうでなくてもマネーリテラシーが高くなるので、メリットは大きいでしょう。また、プラチナNISAで株式型の投資信託を買う人が増えれば、株価上昇に資するでしょう。
強いて言うならば、このあたりがプラチナNISAの「裏」でしょうか。これらが国の思惑だったとしても、国民にとって損になることは特にありません。プラチナNISAで損をする人が出たとしても、それは自己責任ですから。

プラチナNISAよりも毎月の収入が期待できそうな投資3選

私の個人的な感想としては、プラチナNISAはメリットの多い制度ではありますが、ちょっとそれでも物足りないかなと感じます。一番の懸念は毎月分配型の投資信託で、すでに述べたようにタコ足配当の可能性がある投資にはあまり魅力を感じません。
当研究所は最速でFIRE、最速で資産形成を目指しているので、プラチナNISAをやるのであれば私はコレをおすすめしたいというものを3つ紹介します。

米国高配当ETF

ETFとは証券取引所に上場している投資信託のことで、日本だけでなく世界中の取引所にたくさんのETFが上場しています。日本の証券口座からも簡単に購入できて、その中には日本よりも高い利回りのETFも少なくありません。
ここで紹介したいのは、米国のJEPQやQYLD、SPYDなどでしょうか。JEPQとQYLDはいずれもナスダック100指数のカバードコール型ETFです。何のこっちゃと思うかもしれませんが、米国のハイテク企業がたくさん組み込まれているナスダック100という株価指数の「値上がり分」を現金化して分配するETFと理解すればOKです。もう数年間10%を超える分配金利回りが続いているので、かなりの高配当です。これらはNISAの対象外ですが、税金を差し引いても7~8%くらいの利回りになるので魅力的です。
もうひとつのSPYDも、米国の高配当ETFです。S&P500に含まれる銘柄のうち配当の高い銘柄を上位80位まで選んで自動的に組み込んでいるETFなので、当然ながら高配当になります。こちらも数年来4%台の分配金利回りが続いています。こちらはNISA口座で購入可能なので、日本の税金は非課税です(米国の税金は天引きされます)。SPYDは3か月に1回の配当なので毎月ではありませんが、「3か月に1回のお小遣い」という感覚で持っておくのはアリです。

REITインデックス投資

REITとは、不動産投資信託のことです。東証にはJ-REITといって上場しているREIT銘柄群があります。そしてこのJ-REIT全体の値動きを示すのが、東証REIT指数です。J-REITには色々な分野のREITが含まれているのですが、東証REIT指数はそれら全部をひっくるめた値動きの動向が示されます。つまり、東証REIT指数と連動する投資信託やETFなどを保有すれば、実質的に日本の主要な不動産全体に投資ができることになります。
私は1476という銘柄コードのETFでREITインデックス投資をしています。その詳しいところは以下の記事で解説しているので、そちらも併せてどうぞ。

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ここに来てFXとは、かなり唐突感があるかもしれません。私はFXの自動売買サービスである「トラリピ」を長らく運用しており、毎月平均で5万円くらいの利益を得ています。年間で12%を超える利回りを確保できているので、税金を差し引いてもかなりの高利回りです。
FXの知識がなくてもできますし、自動売買なので放置していても利益が出ます。これもかなり魅力的な投資方法なので、詳しい解説記事をお読みいただればと思います。

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まとめ

今回は、まもなく正式に制度化される見通しのプラチナNISAについて、現段階で分かっていることをベースに解説をしてきました。公的年金だけでは心許ないという人にとっては魅力のある制度ですし、運用益が非課税になるという実質的な減税制度はうまく活用したいところです。
ただ、私はまだ年齢的にプラチナNISAの対象ではありませんし、仮に対象であっても別の投資をするほうがいいかなと思っています。そんなおすすめの投資も3つ紹介しましたので、そちらもぜひ参考にしてください。